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「そうですか。ついにくっついちゃったかー」
たまたま門倉さんと二人になった会議室内。彼女はどこか戯けるようにため息をついた。
きっとこちらに気を使わせない為だろう。その気遣いが有り難かった。
「すみません、門倉さん」
「謝らないで下さいよ。ちょっと悔しいですけどね。……それにしても、宇佐美さんってあの宇佐美製菓のお嬢様だったんですね」
「なんでそれを!?」
そんな話、俺は一切漏らしてないのに。
口をあんぐりと開けて固まる俺を、門倉さんは更に笑った。
「藤森さん、異動したての頃とだいぶ雰囲気変わりましたね。……来てたんですよ。宇佐美さんのお父さん。東京まで来たんで、挨拶にって」
……だから皆、揚げせんべい食ってたのか。
「でも、まずいじゃないですか藤森さん。宇佐美さん、縁談の話があるってお父さん嬉しそうに触れ回ってましたよ」
あの人、温厚そうな見た目と違って、実は相当執念深いな。
周りに知られることによって、翔子も断りづらくし、俺に諦めさせようとする魂胆だ。
「いや、大丈夫」
だったらこっちも、宣戦布告にのるまでだ。
「……必ず奪ってみせるから」
門倉さんは呆れたような表情で、再び苦笑した。
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