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何やってんだ俺は。
余裕ぶって寛容な振りをしてたくせに、隠れてこそこそ見張ったり、嫉妬に狂って暴走したり。
自身の行動が滑稽すぎて、笑えもしなかった。
こんな男、魅力の欠片もないよな。
「ごめん……」
翔子の前でだけは、完璧な男でいたかったのに。
力なく俯いた俺を包んだのは、ほっとするような甘いシャンプーの匂いと少し高めの体温。
ドクドクと脈打つ心臓音が微かに伝わって、強張っていた心が驚くほど柔らかく解れていく。
彼女から抱き締めてもらうのは初めてで、それだけで胸が締め付けられるほどの喜びが募った。
「……好きです」
震えた声が小さく響く。
「透矢が好きです」
瑞々しい果実のような唇が、至極遠慮がちに俺の唇に触れた。
驚くほど一瞬、触れるか触れないかという距離感が彼女らしく、その愛らしい行動に我慢ができなかった。
力強く抱き締め返し、今のキスとは比べ物にならないくらい激しく唇を奪う。
彼女のくぐもった可愛らしい声を聞きながら、時間をかけて甘い果実の味を堪能した。
「……もう、引き返せないくらいあなたが好きです」
唇を離した翔子の瞳からは涙が溢れ、それでも幸福に満ちた微笑みを浮かべていた。
恐ろしいくらいの切なさが込み上げて、一人では立っていられそうになかった。
「俺も、もう引き返せない」
絶対に、何があったって誰にも渡したくない。
二人でベッドに腰かけ、もう一度深いキスを交わした後、逸るようにお互いの服を脱がせ合った。
こんなに積極的な彼女を見るのは初めてで、余計に自身の込み上げる欲情を抑えることは困難だった。
貪るように身体中に愛撫し、彼女の良いポイントを探し当てる。
もう俺なしでは生きていけない身体にさせてしまいたい。
忘れられないくらいの快楽を身体に染み込ませたいと必死に舌を滑らすけど、実際に彼女なしでは生きていけない身体になっているのは自分の方だと思い知らされた。
滑らかな肌も、柔らかな膨らみも、恥じらうくせに淫らな嬌声も、全てが俺を狂わせていく。
熱く潤ったその部分は俺を締め付けて離さなくて。
お互いの汗も、快感に漏れる声も口内も、全ての分泌物を混ぜ合わせるようにして、俺達は何度も身体を重ねた。
あまりにも激しく抱いたから、今日は眼鏡をかけたままする余裕はなかった。
俺の腕の中で乱れる素顔の彼女が愛しくて、飽きることを知らずに何度だって翔子を求め続けたのだった。
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