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「お兄ちゃん、ちょといい?」
「何か用?」
「うん、あのね。この本、お兄ちゃんにも読んでもらおうと思って。」
「どれ?」
結愛が差し出した本の著者名を見て、保は笑顔になる。
「千秋さんの本だね。」
「お兄ちゃんは、千秋さんが作家さんだって知ってた?」
「知ってるよ。もしかして知らなかったの?」
「うん。この本、お父さんに借りたんだけど、その時に初めてわかった。だって、速水さんの奥さんなんだから、速水だって素直に思うじゃない。ペンネームなんて、思いもしなかったの。」
「そうかもしれないね。」
「そうなの。それでね、この本、おじいちゃんと速水さんがモデルなんだって。お父さんと珠美叔母さんが話してたから何か気になって借りたんだ。」
「おじいちゃんがモデル?ちょっと貸して。…う~ん。これ、見たことない本だ。」
そう言って手元の本の後ろから捲って頷いてる。
「これ、新刊なんだな。道理で見たことないはずだ。お父さんが持ってるってことは、送られて来たんだ、あのお菓子なんかと一緒に。」
保は、本の出版情報が書かれてる奥付という部分を見て、東京からのお菓子が送られて来た日付とを繋げて納得したようだ。
「発売日前に関係者なんかに渡す寄贈本とか贈呈本って言われるやつだね、これ。それで、結愛の読んだ感想は?」
「ネタバレになっちゃうよ。」
「そんなの気にしてるのか。おじいちゃんがモデルなんだったら、前に聞いたことある話とか、知ってることもあるはずだから関係ないよ。」
「あっ、そっか。」
結愛は納得して話し始めた。
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