48人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっと待ってくださいね。」
そう言って、カウンターの男性は、やりかけの手元を片付けた。
「お待たせしてすいません。…えっと、拓也さんのお嬢さんってことですけど、俺は、谷口海斗と言います。」
「従業員さんですか?」
「いいえ。拓也さんと父が友人で、よく、お店に来させてもらってます。今日は、拓也さんに頼まれた用事をしていました。えっと、そちらの方は?」
「ああ、すいません。兄の聖也です。…あのう。父はどこにいるんでしょうか。どうしても、会いたいんですが。」
「今からは、ちょっと無理かな。」
「どうしてですか?」
時間は、まだ午後8時前。店にいないのなら父は自宅だろう。そこがどの辺りかは知らないが、不意に訪問しても、不味い時間では、まだないはずだ。
「面会時間過ぎてるからさ。今、入院してるんだ、拓也さん。」
珠美は、父の入院のことを、その時点では、知らなかった…。
最初のコメントを投稿しよう!