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「悪いけど、ここで10分ほど待っててくれるかな。俺、車取ってくるから。」
海斗が出ていくと、聖也は、ふて腐れた顔で、椅子をひとつ引くと、ドンと座り込んだ。
仕方なく珠美も、空いてる椅子のひとつに腰掛けた。
「父さんのお店。すごく賑やかな通りから、少し外れてるね。」
「あのなぁ、なんでそんなに残念そうな顔してる?
お前が、すごく賑やかって言ってる場所は、不夜城って言われてる歌舞伎町だぞ。ここは、お前が思ってた場所になかったから、ハズレだって思っているのか。言っとくが、曲がりなりにも、ここは新宿だぞ。」
「そんなこと思ってないよ…。」
「どうだかな。」
「ねえ、兄さん。」
「何だよ。」
「父さんに会ったら、ちゃんと話そうね。これからのこと。」
「妹の癖に偉そうにして、念押しすんなよな。わかってるって、家のこともあるんだから。」
しばらくすると、表に車が停まって、引き戸が開いた。
「お待たせ。戸締まりするから、後ろに乗っといてよ。」
ふたりは、椅子から立ち上がって言われた通りに車に乗り込んだ
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