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結愛が、食べ終わった食器を流しに運んだ後、ふたりの側へ来た。
「ねえ、その本におじいちゃんのこと書いてあるの?」
「ああ、千秋さん…ほら、速水さんの奥さん、知ってるだろう。」
「うん。あの綺麗なおばあちゃんでしょ。」
「そう。あの人、吉水千秋ってペンネームの人気作家さんなんだよ。」
「そうなの?!私、“速水”って苗字に気を取られてた。凄いなぁ、作家さんか…。
あのね、吉水千秋は、私も読んだ事あるよ。女の子の気持ちをね、ぐっと掴む小説書く人だなって思ってたんだ。そっか、あの人が書いてるんだ。
ふふふ。『私、小説家の知り合いいるんだよ。』って友達に自慢できるわ。」
「自慢するのはいいけど、サインとか頼まれてくるなよ。速水さん達に迷惑掛かるからな。特にお前の大好きな“まーちゃん”が、余計な仕事しなきゃならなくなるからな。」
「?」
「海斗と真澄は、吉水千秋の事務所の社員なんだから、サイン頼んだり、出来たもの梱包したり、送ったりって雑用増えるだろうが。」
「まーちゃんって、そうなんだ。」
「お前、今まで気づかなかったのか?…まあ、海斗の嫁さんって顔でしか会ってないし、会うときは、仕事抜きの時ばかりだから、仕方ないけどな。」
「気を付けるよ。それより、その本読ませて。読み終わったら、お兄ちゃんにも読ませてあげていい?お兄ちゃん、おじいちゃん大好きだったから。」
「ああ、いいよ。」
「ありがとう。」
そう言って本を抱えると、嬉しそうに本を抱えて結愛は、部屋から出て行った。
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