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1月 着ぐるみ探偵
斗或市で不可解な事件が起きると、どこからともなくやって来て解決してしまう名探偵がいる。だが、その素顔を見た者はいない。何故か? 彼(?)はいつも、ピンクのウサギの着ぐるみを着ているからだ。
人呼んで「着ぐるみ探偵」。「中の人」が誰なのか、誰も語ろうとはしない。
鈴木さんは、出張での宿泊先のトアルホテルで殺人事件に巻き込まれてしまった。
警察の聴取を終えて鈴木さんが部屋に戻ると、見慣れない大きな箱が置いてある。恐る恐る開けると、中に入っていたのはウサギの着ぐるみだ。え、これってまさか?
「おめでとうございます、あなたは着ぐるみ探偵に選ばれました。すぐにこの着ぐるみを着て、事件を解決に導いて下さい。」
同封されていたカードを見て、鈴木さんは何となく理解した。
着ぐるみ探偵の主体は着ぐるみ。そして、真相に関係ない誰かに着てもらって、事件を解決する。事件の度に中身が変わる名探偵、それが着ぐるみ探偵の正体なのだ。
(……結局、僕はこの事件においてモブでしかないんだな)
そう思いながら、鈴木さんは着ぐるみを着込んで事件解決に向かった。着ぐるみには推理力や洞察力を高める効果があるらしく、事件はすぐに解決した。
事件が終わって、鈴木さんが着ぐるみを脱いで部屋に置いておくと、いつの間にか着ぐるみは消えていたという。
もしも斗或市で何か事件に遭遇し、ウサギの着ぐるみを見つけたら、迷わず着てみることをおすすめする。
それが事件解決の早道だから。
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