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10月 神廻(ショートバージョン)
斗或市の秋祭には、昔から一つだけ掟がある。
祭の前夜12時から一時間程、神様が町を廻り歩く「神廻」という言い伝えがある。その間、誰もその姿を見てはいけないのだ。見たら祟りがあると言われている。
神様が町を廻る道筋は毎年神主さんが占いで決める。ルートが決定すると、その界隈に住む全ての住人に前もって通達がある。中には、この通達を「神様警報」などと呼んでいる者もいる。
宮田君の友人のS君は、祟りを信じていなかった。彼はこの夜、神様を見ようと計画していた。
当日、宮田君や友人達はSNSを通してS君と繋がっていた。神様が通る時刻に外を見たS君は、突然何やら意味のわからないことを言い出し、そのままSNSから落ちてしまった。見ると、いつの間にかS君のアカウントが削除されている。S君の写真も連絡先も何もなくなっていた。
それっきり、S君は消えてしまった。宮田君達以外のクラスメイトや先生は、卒業するまでS君なんていなかったような顔をしていたという。
今では自分達も、S君の名前も顔も朧気にしか思い出せないと、宮田君は言う。S君は神様に取られたのかも知れない、とも。
この風習さえ守れば、秋祭は普通に楽しいお祭だ。来られる方は、ゆめゆめ余計な好奇心を起こさないように。
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