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「……ご忠告はありがたく受け取っておきます」
私がそう言って立ち上がろうとしたところで、スマートフォンが震えた。画面を見ると「聖美」の2文字が表示されていた。
「どうした?」
「今すぐ15万円ぐらい用意できない?」
気が動転したような声で聖美はそう頼んできた。
「え?どうした??そんな大金、持ち合わせていないぞ」
「リンが散歩から帰ってきたら急に泡を吹いて倒れちゃって……緊急入院が必要だって」
「……わかった。また後で折り返す」
私はそう告げ、通話を終えた。
「聖美は何度か金をせびってきました。最初はお母さんの具合が悪くて入院するという理由で5万円、次はペットのリンちゃんが骨折したからという理由で10万円……合計で聖美に渡した額は300万円を軽く超えていました」
ついさっき相葉さんから言われた言葉が頭の中をぐるぐると回る。
「もし何かありましたら、こちらにご連絡ください」
相葉は電話番号の書かれた紙を私に手渡し、伝票を持って席を立った。
「すみません。最後に1点だけ訊いていいですか?」
「はい」
相葉さんが動きを止めた。
「2017年の夏以降、聖美とは会っていないんですね?」
「はい。会っていません」
「わかりました。ありがとうございます」
私はそう告げると、再びスマートフォンを手に取った。かける相手はもちろん、聖美だ。
「もしもし。リンの容態はどうだ?」
「うん、今は落ち着いている。それより、入院費何とかなりそう?」
「その話の前に、何点か確認させてほしいことがある。メッセージで投げるから、正直に答えてほしい」
私はそう告げ、電話を切った。
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