真相

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「このドッグフード、聖美さんの散歩ルートに仕掛けられましたよね?今日急遽聞き込みを行ったところ、あなたが餌を仕掛けているところを近隣住民が目撃していましたよ」 「……だから何だっていうんですか?」 「この餌を検査したところ毒物が検出されましてね、故意に置いたのであれば『動物の愛護及び管理に関する法律』に引っかかってくるんですよ。最大で五年の懲役刑になりますね」  相葉さん……いや、相葉は押し黙った。 「近隣住民が目撃していますよ。日ごろからあなたが聖美さんの動向を窺っているところをね。あなたは聖美さんの飼い犬、リンちゃんに毒を盛って急遽獣医にかからせようとした。獣医にかかるには多額の金がかかる。聖美さんがあたかも詐欺師のような印象を透に与えておけば、多額の金の話を聖美さんが出した時点で結婚を破談にできると踏んだんですね?」  そう問いかける幸人の眼が一層鋭くなった。今の幸人の眼は僕の親友の眼ではない。刑事の眼だ。 「それはいくら何でも出来すぎなつくり話でしょう。第一、そこまで聖美と水無月さんの情報を私が得られるわけがない」  幸人が厳しい視線を投げかける一方で、相葉はそう言って穏やかな笑顔を作った。だが幸人は追撃の手を緩めない。 「そうですかね?これがあれば十分できるんじゃないですか?」  幸人はそう言うと、小型の機械が入った袋を相葉の目の前につきつけた。 「これ、小型の盗聴器です。聖美さんのご自宅のコンセントに仕掛けられていました」  読み通りだった。私は相葉との話の中でどうしても不自然な点があると感じていた。そう、私と聖美の私生活をよく知らないとできないはずなのだ。私は朝、相葉と別れた後で聖美に連絡を取った。そして幸人立会いの下で盗聴器の調査を行ったのである。そうしたら案の定、盗聴器が見つかったというわけだった。
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