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リアムが腕によりを掛けて作ってくれたシュニッツェルと発見してくれたスパークリングワインのディナーは今ではしっかりと食べるようになった慶一朗の心身を満足させるもので、昨年のドイツ旅行でリアムの父のマリウスが作ってくれた料理も美味かったから次はお前が作ったものを食べてみたいとリクエストをする。
その言葉にリアムが手にしたナイフとフォークが動きを止め、どうしたと横顔を見つめると、ああ、ケイさんがそんな事を言ってくれるようになるなんてと感動に声を震わせたことに気付き、羞恥からうるさいと吐き捨ててそっぽを向く。
「ごめんごめん」
心底そう思っていないだろう謝罪を受けて眼鏡の下から愛嬌のある顔を睨むと、鼻先にご機嫌伺いのキスをされ、俺はデュークじゃないと思わず返してしまう。
「うん、ケイさんはケイさんだ」
だったらさっきの犬の犬同士のコミュニケーションのようなキスは何だと瞼を平らにすると、一転して真剣な顔になった後、頬を手の甲で撫でてそこにそっとキスをしてくる。
そのキスがあまりにも心地良くて一瞬で勘気を解くと、それを見抜いたらしいリアムの顔にも笑みが浮かぶ。
「……罰としてこのトマトを食え!」
「あ! またそんな子どもみたいなことをする!」
心の動きを見抜かれたことに腹は立たないがこのまま大人しく引き下がるのも癪だった為、苦手なものは極力最後まで残す為にぽつんと残っていたベーコンが巻かれているトマトをリアムの皿に投げ入れ、呆れたような顔に勝ち誇った顔を見せつけ、そんな二人の様子を、あっという間に食べ終えて満足そうな顔のデュークがいつものことだと言いたげに見上げているのだった。
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