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沙羅たんの記憶の話
「沙羅たんってさ、12歳からの記憶ないって言ってたじゃない?」
「あーあの嘘のことな」
「そーそーあの嘘……え!? 嘘!?」
僕は驚いたよ。ええ、驚きましたよ。あの時の胸を痛めた時間を返して欲しい。切実に。
「なんでそんな嘘つくの!」
「翔との関係を聞かれたら、そう話せって爽が」
「爽さんが!?」
なぜ。ホワイ!?
「ちょっと爽さんどういうこと!?」
「なんの話をしているのかわからないが……。面白そうだから」
いやそれ絶対僕の聞きたいこと分かってるでしょ!
「鬼! ひどい! おにちく!」
「心外だ」
何を笑っとるんだ貴様は!
「僕はこれでも気を使ってたんだぞ……っ」
「任務が終わってからもうここには戻らないって話はしてたから、まーいっかって思ってたんだ。もう関わらないって思ってたから」
沙羅たん……。
「悪かったよ。次からは、爽の言うこと聞かねぇ」
「いいぞ沙羅たん」
それ、本当にできるのかな? なんていうツッコミは野暮だからやめとくよ。
「ごめんなさい」
「爽さんも素直でよろしい」
爽さん、絶対悪いと思ってないだろうけれど! ほんと、可愛くないぜまったく。
「いいよ、僕は優しいから許してしんぜよう」
沙羅たん、そんな不安そうな顔しないで。可愛いから。
「その代わり」
「さて、沙羅帰るか」
「まてまてまてまて」
「急用ができたから帰る」
「うぉおーい、ちょっと待て! 僕の! 僕の話は最後まで聞きなさい!」
逃げた。逃げおった。なんなのあの人! 絶対、僕のこの後のセリフ予想してたでしょ!
許してしんぜようのあたりから立ち上がってたし、くっそぉ。
「ほんっっと、かわいくない!!」
なんで僕は好きなんだあの人のこと!!! 解せぬ!!!
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