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猫の話
「ねぇねぇ、結局さ、白猫って誰だったの?」
僕、野軒歩。みんなから、ノノって呼ばれてるよ。
今は、本編終わってから3日後の夜のお話さ。
ちなみに今は僕の部屋。誰を呼んでるって?
爽さんだよ!!!!
他の人にはあまり聞かせたくないから呼んだの。もちろん、今は二人きり。
しっかし、あなた……ホイホイ着いてきすぎじゃない? 僕、一応貴方に告白してるんだけども。
僕に襲われちゃうぞ。いいのか? ん?
とか思いつつも僕はぐっと耐えているのだ。相手は恋愛バブちゃん。きっと、そういうこともわかってないみたいだろうからね。
可愛い。とか、なるんだろうなぁ。俺が恋を教えやんよ、とかなるんだろうなぁ。
僕はどうかって? 全然思わないよ。爽さん、わざとやってる節もあるから、全然可愛くない。
なのに好きなの……なんでだ……僕が聞きたい。
「ああ、あれ。同業者」
秒で問題解決。さよならさんかく。
「同業者?」
「ああ。同じ探偵というわけではなく……そうだな、身近で言うと誠みたいな人間だ」
誠……はっ。せいのことか。
「あと他に聞きたいことはあるか?」
「うん」
「わかった。じゃあこれで」
「いや、今あるって僕言ったよね?」
絶対あなたわざとスルーしたでしょ。
「もうすぐ役員選挙が始まるわけだけど、爽さんまた生徒会メンバー辞退するの?」
「当然。生徒会はやることが多いし、なにより、学校の顔だ。校内だけでなく、他校との交流もある。俺はやりたくない」
「風紀は?」
「断る」
風紀も役職だからなぁ。きっと、無名に戻りたいんだろう。
でも、
「僕は、爽さんに風紀やってほしいけどなぁ」
「その理由は?」
「爽さんが危ないから。ぶっちゃけ、学園が変わるまでまだ時間がかかるわけじゃん? その間、僕ら奨学生には権力とかの後ろ盾がないわけ。そんな中、顔がステータスの世界で誰が危ないと思う?」
マリモがそうだった。そうそうにおじさん、という後ろ盾を失い、挙句、誰にも庇って貰えず主犯扱いされて……。今どこで何してるんだろうか。
爽さんもわかっているのか、なにも言わずに僕の話の続きを聞く。
「でも風紀委員長になれば、自由は少なくなるけどある程度の安全は保証されるじゃないか」
「状況は理解しているんだが」
爽さんはそれ以上言わなかった。ちょっと悩んでて、その後、小さく、考えておく、とだけ言った。
なんやの? 引っかかるねぇ。
どうせ教えてくれないだろうし、いいけどさー。
「あとひとつだけ、爽さんだから言っとくね」
爽さんと立ち話だったから、爽さんのすぐ後ろ扉だったのだ。
その扉を、開けてあげる。僕ってば優しい。
「次から僕……というか僕じゃなくても、この世界で二人きりで会うのは、理由がどうであれ"そういう意味"だって思った方がいいよ」
素直に出ていく爽さんは、いまいち理解しかねてる顔だ。さすがだぜ恋愛バブちゃん。
「僕が、爽さんをベッドまで引きずっていくような男じゃなくて良かったね」
そこでようやく意味に気づいたらしい。遅いよ、全く。
でも、ぱっと真っ赤にした顔は見れたから、まー満足かな。
「僕は予感した。爽さんのペースに合わせてたら、付き合うまでに成人超えることを」
「あいつを落とすのは正攻法じゃ無理だっつーの」
ぶちっと切られた。え? 切ったのあなた? 電話切りましたね?? 僕の電話を!
沙羅たん……ほんとあなたひどいっす。オヨヨ。
でも、爽さんと行った一連のやりとりをちゃんと最後まで聞いてくれたのは嬉しいよ。
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