クエッション・アンド ・アンサー

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「変なこと考えるなよ」  ──  変なこと考えるなって?  ボクはいつでも変なことばかり考えていたよ。毎日乗る地下鉄の電車が突然閉所恐怖症になって、暗いトンネルの中でもがき苦しんで出口を求めて猛スピードで走り始めるんだ。それでボクら乗客は乱れた慣性の法則のせいで、一番後ろの車両に吸い込まれるみたいに雪崩れ込んで優劣なしの一塊りになるの。そして一つの生命体になったボクらと閉所恐怖症の電車はどうにか新天地にたどり着いて、暗がりを走るだけの苦痛や競争原理でしか動かない世界からやっと逃れることが出来るんだ。    それからボクのことを囲んで小突き回す"もやし"の命名者たちの頭を、突然神様から授かった超能力で木っ端微塵に粉砕するとかね。どれも子供地味ててつまんないだろうけど、自然と思いつく変なことにそう面白いことなんてないから。    ところでさ、アンタの言う「変なこと」の意味は薄々わかるけど、直近でボクが考えた変なことは、知っているだろうけどすでに実行済みだから。時間は前にしか進まない。アラブの王様や大富豪の時間だって前にしか進まないんだから、所詮小市民のアンタが泣いて喚いたって、ボクがやったことは録画した映画みたいには巻き戻せないよ……悪いけど。
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