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どうして、ボクは母さんを殺したか。
邪魔だからに決まってる。いつもボクの行こうとする所に仁王立ちで立ちふさがって来るからさ……邪魔じゃないか。強引に通ろうとすると、アンタも知っているようにあの金切り声だ。あの周波数にはとても太刀打ち出来ない。だからボクは毎回、好きな所に行けずに耳を塞いで引き返すしかなかったのさ。
アイツがボクに異常に構い出したのはアンタに愛されなくなったせいだ。だからアンタがボクに母さんを殺させたようなものかな。別に責任逃れをしようなんて思わないけど。
アンタたちの間に何があったのか知らないし知りたくもないけど、アンタに受け入れてもらえなかった愛情が歪な形になって、ボクに向けられるようになったとボクは思っている。アイツはボクをがんじがらめにして、アイツのゴツゴツの骨格の中に無理矢理押し込めようとして、そのことに全精力を使ってた。
僕に向けられた歪なものは、もう愛情の形なんかひとつも留めてなくて、その全く真逆の暴力や虐待に近かったと思うな。そんなこと、柄にもなく酒の匂いと甘ったるい香水の匂いをプンプンさせて、深夜に帰宅するようになったアンタの知るところじゃなかっただろうけどね。
金属バットで殴られて、血塗れでヒーヒー泣いて逃げまわるアイツは傑作だった。もちろん今回の惨劇の主演女優賞だ。
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