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「ハル、上にいるのかい?」
朝早くから仕込みをしていたおばあちゃんが下で呼んでいるわ。行かないと。
家事も一段落したところだし。
パン屋は一階で、二階で祖父母と一緒に住んでいるの。
基本的には、祖父母が朝早くから仕込みをしていて、私はその間に起きて朝食の準備をするの。仕込みがひと段落したら、祖父母が二階に上がってきて一緒にご飯を食べるの。そのあとは二人はまた、パン屋の方に。私は家事を済ませるわ。だんだんパンが焼けてくると、二階に居ても甘い匂いが漂ってくる。
家事が終わったら、下に降りてパン屋で働くの。朝から大忙しだけど、お客さんに会えるし、とても充実しているわ。
下に降りると、おばあちゃんがバケットと他何種類かのパンが入ったカゴを持っていた。
「なーに?おばあちゃん。」
「ハル、配達頼めるかい?お得意様ののコロンさんとこ。」
「分かったわ。行ってきます。」
「気を付けるんだよ。」
コロンさんは、この街で宝石商人をしているお得意様。祖父母のパン屋に一度来てから虜になって、週に2回ほど配達を頼んでくれる。宝石商売のことはよくわからないのだけど、おじいちゃんに言わせたら、かなりのやり手な方らしい。
まぁ、私は、今くらいの生活が続けることができれば十分なんだけどね。
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