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今日は、パン屋の仕事はお休みで、朝からコウと一緒にマリアさんに呼ばれていた。コウが家まで来てくれ、合流して街を歩いてコロンさんのお店に向かっていた。
突然後ろから口元を布で押さえられて、抵抗もできず、なんだか急に意識が遠くなって体の力も抜けてしまった。
気づいたら、ここ、薄暗い部屋に連れ込まれていた。手足は縄で縛られて床に転がされている。
誰が、こんなことっ。
「気づいたか?俺のこと覚えているだろ。」
一気に部屋に明かりがついて、まぶしくて顔をしかめてしまう。
声の聞こえる方を見ると、マリアさんのカバンを盗ろうとして、私とコウに捕まった男。
「何、知らないわ。自惚れないで。」
ガッ
琴線に触れてしまったのか、男が蹴ってくる。
「いたっ。」
「口答えすんじゃねぇ。」
「じゃあ、何が目的なの?」
「金だ。そろそろあの女のところに手紙が届くはずだ。」
脅迫文でも送りつけたのだろうか。マリアさんの素性は知っているみたいだ。
「これで金が入れば、俺はここからとんずらして、豊かな生活の始まりさ。ハッハッハッ」
「なんでそこに捕まらないって考えはないのかしら。独房生活の間違いよ。」
「さっきから俺のことばかにしやがって。女だからって容赦しねぇぞ。」
髪の毛を引っ張られて体を起こされる。痛くてたまらないが、言いたいことは言ってやらないと収まらない。
「あんたなんてすぐ捕まるわ。私をこんだけぐるぐる巻きにするくらい弱いってことでしょ。」
「なんだとっ」
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