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店がある駅に着き店に電話をした。
時間が無いもだが、忙しい時に私が顔を出して皆を驚かすわけにはいかない。皆に会いたいのは山々だけど、店の裏口でケーキを受け取った。
「進藤さん、ありがとう。またゆっくり来ますね」
「相澤副店長も会いたがっていたんですけど…」
「うん、宜しく言っておいて」
大事なケーキを受け取った。
時刻は16時を回ってる。 直ぐに駅に向かい電車に乗る。さすがクリスマスイブ、都心に向かう若者で混んでいる。立ちっぱなしで1時間、着いたらダッシュで17時13分のスペーシアに乗らなければならない。
北千住に着いた。急いで乗り継ぎ時間ギリギリのスペーシアに飛び乗った。年末の帰省からか、来た時とは違い空席は疎ら、やっと通路側の自分の指定席に辿り着いた。横には初老の品の良さそうなご婦人が座っていた。
大事なケーキを膝の上に乗せて座った。ふと見るとそのご婦人もケーキを大事そうに膝に乗せている。
春日部を過ぎた頃「ご帰省ですか?」と尋ねられた。
私は何と答えていいのかわからず、今日のいきさつをしゃべくりまくってしまった。
「あら、それは大変ですねぇ。でもそこまでして貰えるなんて、お客さんは幸せですね。でどちらの旅館ですの?」
「鬼怒川温泉の翠幸館と言う所でございます」
としゃべくりついでに宣伝までしてしまった。
「あらっ、老舗ではないですか!その若女将にお会い出来るなんて…」
「えっ?ご存知ですか?ありがとうございます」
「私は孫に会いにね、このケーキが食べたいって毎年楽しみにしていて」
とケーキの箱を愛おしそうに撫でていた。
「あっ、いけない。お話しに夢中になって、降りる駅に着いてしまいます」
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