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12月24日朝5時
「翔真、私行くね」
まだ 寝ている夫に声をかけ、作務衣に着替え前掛けをした。
キッチンで毎朝欠かさないコーヒーを入れていると。
「佳美、おはよ~」と間抜けな声がする。振り向くとハリネズミの様な頭をかきかき半開きの目をこっちに向けてる翔真がいる。
「調理場はどうよ」
とまだ起きてない声て聞いてきた。
「ん~、ぼちぼちかな?」
私が嫁いで間もない頃、長年うちの旅館の味を守ってきた吉武板長が倒れた。それから女将のつてを使い、今の板長を呼び寄せどうにか急場を凌げた。
でもその板長は筋金入りの頑固者。反りが合わない板さん何人かは辞めてしまった。
残った板さん達とも上手く行ってない。私は人手不足と場を修める為に朝は調理場の小間使いをしている。
「前よりは皆落ち着いて来たよ。それより早く人見つけて来てよ社長さん!手が足りないにも限度がある」
「ハイハイ…でも佳美の作務衣姿可愛いから見つけるのよそうかなぁ」
「はぁっ?」
愛する妻の睡眠時間を奪っておいて!危機感のない経営者…いや、夫のお尻に回しゲリして草履を履いて外に出た。
まだ真冬の外は暗く吐く息が白い。
その白い息で呟いた。
「今日はクリスマスイブか…」
私は去年迄のこの日を思い出していた。イブのスーパーは1年で一番タイトな夜だ。新米食品マネージャーの進藤さん大丈夫かな?
後で電話してみようかな?
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