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朝食の料理が次々と出来上がって来る。それを部屋ごとの番重に振り分けていた。
「あれっ?楓の間は卵アレルギーの子がいるんですよね?」
私がエプロンのポケットのリストを確認していると、怪訝な顔をして板長が近づいて来た。
「あれっ?何やってんだか!作り直します…おいっ!」
と顎で板さんを呼んでいる。私はそれを見てムッとした。すると板長が吐き捨てる様に。
「ったく、自分の子が食べられないのなんか親が取り分けろや!」
いたたまれなくなった。
「そんな事は毎日家でやってるんです!ここに来た時ぐらい気にせず食べてもらいたいじゃない!」
思ったよりも大きな声が出てしまい、調理場は静まりかえってしまった。
「ふふっ」
振り向くとお義母さん…いや、女将が立って口に手を当て笑っていた。
見られた、やばい…!
「女将、おはようございます。すみません…」
「いいのよ、朝から元気でいいわね、若女将、これ…」
小さいケーキの箱を持っている。
「あっ、もう届いた!」
「今来たの。このケーキ好きなの?」
女将が微笑みながら聞いてきた。
女将に近づきこっそりと
「いぇ、今日社長が吉武板長のお見舞いに行くので、そのケーキ美味しいし、クリスマスだし、だからネットで…」
と小さい声で言ったのに。
女将は皆に聞こえる様にわざと大きい声で。
「あらぁ~吉武になのぉ~若女将は優しいわねぇ…その人に朝から回しゲリされてお尻を指すっている社長は余程悪さをしたのでしょうね」
と言ってケーキを持ったまま調理場を出て行った。
「「「えっ!」」」
また静まりかえった…。
私は女将のあとを追い
「義母さん、何もみんなの前で…私、怖がられちゃうじゃないですか」
お義母さんは悪戯っぽく笑ながら
「わざとよ、少し怖がらせないと…みんな佳美ちゃんに甘え過ぎ!身体もたないわよ!さっ私達も朝御飯たべましょ?」
そう言ってケーキを持ったままシャラシャラ歩いて行く。その後ろ姿が失礼だけど可愛く見えた。
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