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朝御飯を食べ終わると次はお見送りだ。
着物に着替えて髪を整えて…と。
最初は時間がかかった着替えも今ではもう慣れた。背筋がシャンとなって気持ちが引き締まる。姿見でチェックをして帳場に向かう。
帳場に着くと翔真とお義母さんが何やら神妙な顔つきをしている。
「どうかしました?」
「あっ、若女将ってさケーキ作れる?」
「なわけないじゃん!売るのは得意だけど」
「だよなぁ」
翔真が項垂れている。
「女将は?」
私は聞いてはいけない事を聞いてしまった…。
「んなわけないじゃん!私は食べるのが得意だもん」
何とお義母さん、 真似しやがった…。
「で、何で?」
二人の顔を交互に見た。
翔真が話し出した。
「今日ご宿泊の松島様、アレルギーを持ったお子様連れがいらっしゃるんだけど、吉武板長が作ったクリスマスケーキを楽しみにしてるんだよ」
「えっ?吉武板長てケーキ上手なの?」
お義母さんがそうじゃないと首を振り
「以前松島様がいらした時、アレルギーがあるからクリスマスはお寿司でケーキを作ってたって、でもクリスマスぐらい本当のケーキを食べさせてあげたいって言ったら吉武がね…」
「いやいや、それまずいじゃないですか!」
私は焦って二人の顔を見た。すると翔真が。
「だから、今日吉武さんの病院に行ってレシピ聞いてあの板長に作ってもらおうとしたら…」
そこまで聞いて私はわかった。
「ハイハイ、わかりました。「何で俺がそんなもん!』…でしょ?」
二人はだまって同時に頷いた。流石親子!
その時、私のスマホがバイブした。
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