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〜古書伝『イラブ伝記』より〜
昔、1000年前のことです。
地上にはイラブ帝国という大きな国がありました。何千もの小国を治めているのは、偉大なるイラブの王様、ガゼルという王でした。
然し、ガゼル王にはガゼラという双子の兄が居ました。兄は弟のガゼラが好きではなく、何度も国に足を運んでは小さな災いを放ち、イラブ帝国を困らせていました。
そんな中、ガゼル王に、王女が産まれました。真っ白な髪に、真っ白な肌、青く澄んだ瞳に小さな手足、その姿はまるで天使でした。イラブ帝国の国民は皆喜びました。小さな天使の誕生に心から祝福をしたのです。
ですが、ガゼラだけは違いました。彼は悪魔と契約し『魔道卿』となっていたのです。様々な神々が少女に祝福の祈りを与える中、ガゼラは帝国にやって来て、イラブ城に入ると、宴の間で行われている祝福の儀式中に乗り込みました。そして、祈りを捧げる神々を皆殺しにしてしまったのです。
そして、ガゼラは、産まれたばかりの赤ん坊に呪いをかけました。
それは、1000年の眠りにつくこと。絶対に目覚めない悪魔の呪いでした。その力は受けた神の祈りをも上回り、誰も跳ね返す事が出来ず、ガゼルは嘆き悲しむ王を見て笑うと、その場を去ってしまったのです。
それからガゼラは、イラブ帝国を一夜で滅ぼしてしまいました。
ガゼル王は逃げる最中、王女様を偉大なる大樹のうろの中にそっと寝かせました。二人はガゼラには敵わないと分かっていました。殺されると思ったのです。
せめて、王女だけは助かって欲しいという願いからでした。
そして王は背後からやって来たガゼラによって殺され、王妃も共に亡くなりました。その時大樹はうろを塞いで、王女を隠していた為、ガゼラには見つかりませんでした。
王女は、それからずっと永き眠りについているのです。父の顔も母の顔も知らず、生まれた国さえ見る事もなく、王女は目覚めるその日まで眠り続けるのでしょう……。
〜古書伝『イラブ伝記』より〜
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