Episode【 Ⅰ 】

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 倒れた少女を受け止めるため、手を伸ばしたリヴォークの胸の中に少女は落ちてしまう。  その胸の中から真っ青な瞳が彼を見上げている。二人は暫し見つめ合って、リヴォークは少女を優しく抱き締めると、その小さな唇にキスをしてしまっていた。  少女は意味が分からないため、目を見開く。何が起きているのか理解していなかった。 「……ッ!?」 ──ぼちゃん! 「……!?」  リヴォークは我を忘れていた、そのため自分が犯した行為に気付きそれを恥じて水の中に頭まで浸かって隠れてしまう。少女はそんな彼を水から引き上げるように引っ張った。 「お、王女様……わ、私を如何様にもして下さいませ……」 「……い、か?」  その反応で、リヴォークは少女が赤ん坊に近い存在である事を理解した。生まれたばかりの赤ん坊で呪いにかけられ、1000年眠り続けていたのだ。  言葉が理解出来ない、話す言葉もカタコトだ。リヴォークは首を傾げる少女を今度は優しく抱きしめそのまま抱き上げた。 「王女様、帰りましょう。貴方にはお話しすることが沢山ありますが……その事を理解出来る日まで、私が貴方の世話役として側近としてお傍に居ます」  そうリヴォークが言うと少女は理解したのか、口元に弧を描くようにニッコリと笑って見せたのだ。彼はその笑顔を見てまた胸の高鳴りを覚えるも、今度は撫でるだけに留め、その足で元来た道を戻って行った。
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