Episode【 Ⅰ 】

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 木々のトンネルを抜けると森の一角に少し開けた場所がある。リヴォークはそこに立つと、精霊の力を借りて城に帰ろうとしたが……。そこに、精霊の分身は居ない。代わりに、精霊の本体が現れた。 「私を城に返して頂きたい」 「帰れますよ。私の力がなくとも、この少女の持つ力で。この子からは神の加護を感じます」  その言葉を聞いたリヴォークは、腕に抱く少女を見た。 「この子が、魔法を使えると?」 「試してごらんなさい。きっと、私より強い力を持っていますよ、この子は……」  精霊が少し離れると、リヴォークは地に手をかざした。  ──すると……。  魔法陣が現れたではないか、然し先程の青い魔法陣ではない。淡い緑色の、この地に漂うエネと同じ色をしていた。 「お前は、一体……」  バサバサと服がはためく、それなのに少女は髪も服も靡いていない。不思議に思うもリヴォークは帰る先を口にする。 「天空島(そらじま)、天の城、リヴォークの執務室へ連れて行け!」  言葉と同時にリヴォークは執務室へ転送された。本当は転送部屋と言うつもりだったが直感だった。  直接部屋へ飛べる、と。その予想は当たっていた。 「すごい……王女様、貴方はすごいです」  そう褒めるも、少女はぐったりとしていた。慌てたリヴォークだが、どうやら眠っているだけらしい。魔法は相当の力を使う事を思い出し、彼は執務室と両隣りの自室に入ると、綺麗にメイキングされた青いベッドに少女を寝かせる。 「おやすみなさい、王女様……」  そう口にするとリヴォークは部屋の戸を閉め、やり掛けの執務に取り掛かるのだった。
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