ドミナント

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「服は、そのままでも脱がしてもどちらでも。下は汚れる可能性が高いから脱がした方がいいけど……わたしはとことん焦らされた。服がある、ってすごく焦ったいのよ。素肌で触れ合うことを渇望するくらい」 「はい……じゃあ、このままにします」 「そうね、どっちにしろワンピースだから、手枷嵌めたらもう脱がせられないし」 「あ……」  恥入るように下を向く彼。至らなさに身を縮める様子は、ドミナントではなくてサブミッシブだ。 「大丈夫、これ、隠しボタンになってて前をはだけることはできるから」 「あ、はい。良かったです」 「じゃあ、上から三番目までボタン、外して」 「はい」  風間くんの震える指が、ニットに付いた小さなボタンを摘む。摘むだけで、なかなかボタンホールを通せない。わたしは手伝いたくとも両手の自由が効かないから、それを見ていることしかできない。 「すみませっ……、なんか、焦っちゃって、手汗……」 「だい、じょうぶ」  焦る一真くんを落ち着かせようと掛けた声は、吐息混じりで熱かった。 「焦らされるのが好きなの。あの男がしたように……焦らして」 「は、はい」  記憶が蘇る。まるで映画のフィルムのように、わたしの脳内にすべてが映し出されていく。あの男は、わたしの服を脱がさず、自由を奪って、そして、服の上からそっと、優しく撫で回した……。 「触って……そうっと」 「はい」 「指の腹だけ使って。圧がかかるかかからないかくらいの強さで。わたしが、触って欲しくて身を捩ったら避けて」 「は、はい」 「見て……目で、愛すの」 「はい」 「指も使いながら、目線で愛撫して、目線でキスして……感じやすいところは凝視して」 「はい……」  一真くんに伝わるだろうか、分かってもらえるだろうか。分からなくてもいい……わたしの記憶は、あの男に与えられた快楽をなぞり始めている。 「見て……目で、犯して」  一真くんがごくり、と唾を飲む。彼の股間は、窮屈そうに張り始めていた。
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