ドミナント

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 一真くんの瞳が、じっとりとわたしの体を舐めていく。その視線はニットワンピースの隙間から入り込み、下着をつけていない秘部にも注がれる。  視線の強さに思わず腿を擦り合わせると、敏感な部分に刺激が走る。わたしは唇を噛んで声を堪えた。 「触ります」  掠れた声でそう言うと、一真くんは右手を伸ばしてきた。 最初に、額。そこから瞼へ、眉間へ。頬骨を通り、唇へと辿られる。彼の指が、震えている。  指先だけを軽く触れさせる、エンジェルタッチ。もっと触れて欲しい、という欲を呼び起こすには、やはり愛している男の指でないと難しいかも知れないと、冷静に考える自分がいる。  唇に触れ、首筋に触れ。少し戻って顎を摘まれる。喉に触れるとき、一真くんの吐息がかかる。真剣な目、目にかかる銀髪、伏せられたまつ毛の長さと、少しだけ垂れている目尻。 「っ、ふ、」  詰めていた息を吐く。鎖骨から今度は左肩の先で一真くんの指が踊る。つるりと滑ると見せかけて、撫で回される…焦れる。 「上手」 「美彩さん」  一真くんが触れながら囁く。  僕、言う通りに触ります。  だから、頭の中で元彼さんのこと、考えていてください。  どんなことをされたのか、逐一教えてもらえれば、そのように動きます。けど、声までは真似できないし真似する余裕もない。  だから、囁かれたことや命令されたことを脳内で反芻してください。動きは、できるだけ忠実にしますからーー。  言われると同時に思い出す、甘いムスクの香りと低い声、体温。わたしはキュッと目を閉じる。あの男と別れて何年も経つのに、こんなに鮮明に思い出せるなんて……。  自分の記憶力の良さを呪うべきか。それともあの男の「躾」を呪うべきか。  いや、わたしはあの男から逃れられないのだ……たぶん、おそらく。永遠に隷属する。
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