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『今どこだ? 三十分たつけど……なんかあったのか? 大丈夫?』
このRINEの着信が今から二十分前だ。 その後に何件も電話の着信があったようだ。あぁもう……とうんざりしながら自分の傍らの男の子に目をやる。
このやんちゃ君のご所望のアメリカンドッグを買ってやったら、ようやくおとなしくなってくれた。
「? どったの、お姉ちゃん」
「いや、なんでもないよ……」
目が合えば屈託なく笑い返される。 なんでもない訳ないだろコンチクショウ。 ……っと、お言葉が乱れてましてよ自分、いかんいかん……!
とりあえず、今のうちにRINEを送信してしまおう。
『ごめん、迷子君に捕まってて、今入り口付近の受け付けにいる』
「ん、YooTubeもっぺん観るー」
男の子がにこやかにスマホを要求してきたので、にこやかに返事してやった。
「食べ終わってからね。 食べてる間にスマホを観るのはお行儀悪いよ?」
「わ、お姉ちゃん結構めんどくさいね! ケーチー!」
おぅ、なんだとゴラァ?! と言いたい気持ちを偽物の笑顔でなんとか誤魔化す。
頼む、早く来て、助けて……!
今日は、付き合いだしてもうじき一年になる元は幼馴染の彼と。 正月三が日の初詣に来ていた。
クリスマスには、初めてそれらしいデートなんてものもした。 ギリギリとはいえ門限も守ったので、初詣に二人で出かけることに、自分の親も彼の親も快諾してくれた。
少し遠出して、名高い神社に二人して足を運ぶ。 勿論凄い人混みなのだけど、それも想定済み。 むしろ狙いはズバリ、神社付近にて展開される露店だ。 『屋台練り歩きしたい! 美味しいのを半分こしあって一緒に食べたい~!』という自分の願いを彼が汲んでくれた。
お参りをすませ、おみくじを引いて。 その後に念願の屋台へ。 二人して一通り見て回った後に、『二手に別れて欲しかったのを別々に買ってきて、それから食べよう!』と提案した。 基本的に自分は、サプライズが好きなのだ。
彼は、二人して食べたいものを一緒に選びたい派だ。だけどクリスマスデートの際に彼に合わせていたこともあり、渋々だけど了承してくれた。
そして、別れて回って、チョコバナナの屋台にて狙っていたカップ入りのミニチョコバナナをゲット……したまでは良かったのだが。 そこに、迷子と思われる男の子がいた。 見たところ幼稚園年少さんか年中さんくらい。 泣き出しそうな顔をしているが泣いていないため、大人達や家族連れは皆素知らぬ顔で通りすぎていく。
『どうしたの、はぐれちゃった?』
声をかけてしまった。 するとその子は、堰が切れたように泣き出してしまい、もう慌てて慰めざるをえなくなってしまった。 往来の真ん中だと邪魔だわ目立つわなので、屋台通りから外れて木陰に移動する。
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