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キャベツと塩だけのスープを飲んだことはあるか、この話を仲間にすると、皆お腹を抱えて笑う。
「そんなの飲めるかよ」口を揃えて一蹴する。
そんな彼らはもういない、この戦争で亡くなった。
俺たちは某国で雇われた傭兵で、俺を含めて20人をこの戦地に送り込み、主に小さな病院や研究所を襲撃する事を目的としたゲリラ部隊だ。
契約期間は今日までとなっており、明日から晴れて日常に戻れる。
そして、『俺の中での日常』と言ったらお母さんがよく作ってくれたキャベツと塩だけのスープだった。
両親は戦争で早くに亡くなってしまったが、食卓によく出され、俺は毎日満面の笑みを浮かべながらこのスープを飲み干していたのを覚えている。
これが幸せの日常だ。
煉瓦で作られたこの建造物は、おそろしく色褪せていて、化石の様に白い。
建築してからしばらく経ち、誰も使われなくなったので、壁面や床に所々に穴や罅が入っている。
戦争で空いただろう、戦車が1台入れる程大きな穴からは月光が差し、青白い灯りで罅が浮き上がって見えるように演出していた。
日中は戦地に赴き、夜はこの場所で仲間と晩を過ごす。
人を殺す、命の重さを重量によって手に伝うこの鉛玉を飛ばす武器にセーフティをかけて、枕元に置く。
いつ殺されてもおかしくないこの状況、銃を取り上げられてもセーフティーを外す一瞬ですら永く生きれるように。
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