『西から昇るもの』

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その女はパッと見た印象たるや、某アメコミのクレイジーなダークヒロインのような雰囲気だった。 赤や緑のロリータ服に身を包み、鈍器を振り回して暴れ回る… その女は小柄だったが、ロリータ服を着てピエロのような化粧をし、自分の身長と同じくらいの大きな杖を持っていた。 杖からは常に青白い光が漏れていて、それを周囲に向けては、何か呪文のようなものをぶつぶつと唱えている。 そしてはるか後方から、ヴォーヴォーと呻き声を上げながら、先程の溶けたゾンビのような不気味なモンスターが俺の後を付けてきている。 「あなたが噂の日本のルーラーでしょ? あのムカつくカイコ女と、やたら強いイランの傭兵に勝ったっていう! あいつらあちこちのドリームランドを荒らしてきてるワルよ! まぁ、いずれワタシが倒すけどねっ!」 女…というより、その声はまだ少女のように聞こえた。 見上げるその姿も、確かに幼い気もする。 ロリータ服のミニスカートに、スパッツを履いているのは恥じらいがあるからだろうか……。 「噂って……誰が噂してるんだ??! でも、お前の言った2人には勝ってもいないし、倒してもいない。 あいつらがそんなスゴい奴らだなんて、知らなかったしな…俺はただ、全力で生き延びようとしただけさ!」 俺は少し、この女との会話を楽しく感じた。 正直、そんなに修羅場をくぐってきたようには感じない。 そんな事を思い、心に余裕が出てきたのか、 右手に巻きついたスラッグが一瞬、ギュッと強く腕を圧迫する。 「ふーーん…そうなの。 わからないでどうにかしちゃうなんて、ちょっとカッコイイけど… そんなあなたを倒したら、アタシはさらに有名になるし、強くなれるわ! 私は史上最強の偉大なる大魔女 、ロウヒの子孫! ネクロマンサー・イナリ! あなたの魂とドリーマー、頂くわ!」 「おい!噂ってどこで聞けるんだよ?!」 少女は俺の質問を無視し、大きな杖をブルン!と振るった。 そして青白い光が周囲に粉のように振りまかれ、キラキラと空中で煌めいた。 「サトル、間合いを取れ。この女、厄介な能力を持っているな。」 スラッグが耳元で囁いた。 俺は素早く当たりを見回し、空中浮かび杖を振るう女から30メートルほど距離を空けた。 女はニヤニヤと笑みを浮かべながら、小声で何か呪文のような言葉を唱えている。 すると、キラキラと光の粉が撒かれた地面が盛り上がり、先程の溶けたモンスターが数体誕生した! 「アタシの可愛いスワンプシングたち! この男を捕まえるのよっ!!」 女は詠唱を終えて、両手で複雑な印を結んだ。 それと同時に、地面から一斉にメルトモンスターがさらに出現した!!
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