『西から昇るもの』

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土砂と泥、そして得体の知れないメルトモンスターだったその肉塊は、なんとも言えない不思議な匂いを辺りに放ちながらさらに白煙を上げた。 そしてついには、俺たちが突貫をしている一点から炎が上がり、それは少しづつ盾に拡がっていった。 「あちちちち! あちちち!!! スラッグ!燃えたぞ!??」 「…大丈夫だ。熱は多少伝わるが、俺の粘液は簡単には燃えん。」 「両腕が熱いんだが! かーなーり、熱いッ!!!」 「ははは。」 両腕に伝わる熱に耐えきれなくなり始めた頃、遂に炎に包まれながら第2の大盾も木っ端微塵に吹き飛んだ! 俺は必死に我慢しながら、さらに回転を続けるスラッグドリルを維持しつつ、敵のいる場所……俺たちの位置からさらに上空、およそ10メートルぐらい……にまで間合いを取った道化女が見えた。 その顔に今までの余裕はなく、真剣な表情で俺たちの攻撃を観察しているようだ。 だが、俺たちの狙いは変わっていた。 女の元へは向かわず、さらにこのまま突撃して、直接ドリーマーを攻撃する! 「スラッグ!このままあの大木に突っ込むぞ!」 「…あぁ。」 俺たちはさらに回転を上げた。軸を中心に、やや楕円形に傾きながらも、俺たちは一本の削岩機のようになっていた。 今や粉々に砕け散った2枚目の大盾の破片を吹き飛ばし、ルーラーの元へは向かわず、真っ直ぐにドリーマーの元へと突撃をかけた。 だが、その時… 辺りに散らばっていた大盾の破片が寄り集まり、糸のようになっていたのを見逃していた。 俺たちの回転にそれは巻き込まれていき…たちまち団子のような塊になって俺に巻きついてきた。 「なっ……!?」 「しまった……そう来たか!」 スラッグも予想外の展開だったようで、思わず声を漏らしていた。 俺たちの回転はまるで糸のように絡まってくる泥と瓦礫の糸を巻き込んでしまい、たちまち太く丸くなっていった。 そしてその時、頭上高くから何か大きなものが振り下ろされた風を切る轟音が聞こえた気がした。 バシイイイイイイイイイン!!!!!! 「!!!??」 俺たちは何か巨大なものに殴られた。 そしてそのまま地面に向かって叩き落とされ、固い石畳を割りながら転がった。 そして……朦朧とする意識の中、敵のドリーマーの巨大な枝が、動きの鈍った俺たちに振り下ろされた事を認識した。 その巨人の拳の如き一撃に、俺もスラッグも一撃で大ダメージを負い、あまりの痛みに動けなかった。 ふと、視線の先には俺のスマホが転がり落ちていて、寝る前に聴いていた音楽が今も響いていた。 スマホもこの世界に持ち込めたのか… ふと、そんな素朴な疑問が脳裏に浮かんだ。 そして俺はフッ、と暗闇へと落ちていった。
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