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組体操の扇というのは、本当ならせめて3人必要なんじゃないかと思う。
僕たちは足をくっつけて踏ん張りあった。
僕の左足と穂乃ちゃんの右足。
手を繋いで引っ張り合って、どうにかこうにかバランスを探る。
手を離したら絶対に倒れる。
「律ちゃん、もっと、ばさばさって扇ぐの。」
穂乃ちゃんは僕と繋いでいない左手を、ばさばさと動かした。
羽ばたくのに失敗した鳥みたいにしか、見えないけど。
「扇ぐの?」
僕は穂乃ちゃんと引っ張り合いながら尋ねる。
「満月なんか追い払うんだから。」
さっきまでと言ってることが、全然違う。
成熟した大人になんか、なってたまるか。
穂乃ちゃんは弱々しく言い放った。
くやしそうに歪む唇。
明日が来ることが、こんなにも怖いんだ。
壮大な夢も、これといった特技も無い。
汚れ知らずの芝生に寝転んで、遊んで暮らしたい。
ただ、穂乃ちゃんと手を繋いでいたい。
僕は月を見上げる。
頭のてっぺんにあって、ぴかぴかに輝く。
僕たちにはどうしようもなく、手の届かないところで宇宙の理を制御している。
世界の仕組みなんて何も分からないのに、分からないとは、とても言い出せない。
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