70点男に言い寄られ

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世間がサンタやケーキで浮かれるクリスマス、独り身である一葉は一人で寂しく買い物などして楽しんでいた。 ただそれも本人がよければ別に悪くない。 どうしても目に入れば気になってしまうが。 ―――周りにカップルが多いなぁ・・・。 ―――で、でも私は一人でも幸せだから! いくつかの店でウィンドウショッピングを楽しみ、最終的な目的地である店へと向かう途中で四聖と遭遇した。 学校ではまず接点がないが、有名人であるため顔も名前も知っていた。 「・・・四聖くん?」 「・・・ッ!」 四聖は人目を引く長身を縮こまらせており、声に反応しビクリと身体を震わせた。 どこか怯えているのだろうか? そのまま放っておいてもよかったのだが、暇だったため足を止めたのが運の尽き。 顔を上げた四聖の顔を見て驚くことになる。 「四聖くん、どうしたのその怪我!?」 「あー・・・。 今日の予定を複数の彼女と組んでいたんだけど、それが別の彼女にバレちゃって・・・」 見事な紅葉が頬に張り付いていて、誰が見ても殴られたと分かる。 彼女がたくさんいるというのは一葉のいる学校では誰もが知っているが、他校の女子は知らないのだ。 だから四聖に寄ってくるのは他校の女子で、一葉の学校の女子たちは観賞用とだけ見ていて付き合いたいと思う人はいなかった。 とはいえ困っているのなら話は別だ。 口の端は殴られた拍子に切れたのか血も出ている。 「痛かったよね・・・。 絆創膏持っているから貼ってあげるね」 「・・・え? いいのか?」 「もちろん。 ここに座って」 手当している間、四聖にジロジロと見られていたのが気にかかった。 「これで大丈夫かな」 「あぁ、十分だ。 ありがとな」 「ううん。 じゃあ、私はこれで・・・」 「あの、一葉さ」 一葉は気付かなかったが、四聖が話しかけようとしたところで近くから誰かのすすり泣く音が聞こえてきた。 「・・・誰だろう?」 心配になり声を頼りに向かうと噴水の前で紅夜が黄昏て泣いていた。 「紅夜くん?」 「ッ! 一葉さん・・・」 「うーわ。 ダセェ顔」 「ダサくない! 泣いている僕も美しいんだ!!」 何故か後ろから四聖も付いてきていた。 「あの、紅夜くんはどうして泣いているの・・・?」 「彼女とデートしていたんだ。 スマホを彼女に信頼させるために見せたら、何故か怒ってきて・・・」 「怒る? どうして?」 「おそらく画像フォルダが原因だと思う。 他の女の子の写真なんて一枚たりとも入っていなかったのに! それは家族や彼女も含めてだ!!」 何故かやたらと押し付けるように見せようとしてきたため、覗き込むようにしてスマートフォンを見た。 画像フォルダは確かに女性の姿は影も形も見えなかったが、その代わりに紅夜が多彩な表情や決めポーズで写る自撮り写真ばかりだった。 「これを見て怒ったの? こんなに綺麗に撮れているのに」 「でしょう!? 一葉さんは分かってくれてるね!!」 一瞬で笑顔になった紅夜を流れから優しく慰めてあげた。 四聖も不満そうにしていたため相手して、これ以上用事もなくなったところで二人が落ち着いたため一葉は立ち上がる。 「じゃあ、私は予定があるからこれで・・・」 そう思ったのだが、何故か二人は行く手を阻むように直立し頭を深く下げてきた。 「「あの! 俺(僕)と付き合ってください!」」 「・・・え?」 こんな経験は今まで一度もなかった。 テレビの企画などで見たことのある、二人同時の告白だった。 男子二人はたまたま偶然被ったためか互いを睨み付け出した。 「はぁ!? 俺が先に言ったからな!?」 「いや僕だ! 僕の美しさに気付けるのは一葉さんしかいない!!」 「俺だって複数の彼女持ちでも許してくれるのは一葉さんしかいない!!」 「えぇ・・・」 「「一葉さんはどっちを選ぶ!?」 突然言われても答えなど出せるはずがない。 断るしか選択肢は存在しなかった。 「えっと、私は・・・」 「大晦日の日によければ返事を聞かせてほしい」 にもかかわらず、答える前にそう言われた。 「はい?」 四聖の言葉に納得するよう紅夜も頷く。 「そうだな。 一葉さんにも考える時間が必要だ」 「えぇ・・・」 「大晦日の30分前に港で集合しよう。 そこでコイツとの決着をつける」 断る隙を与えてはくれなかった。 二人は競争するように一葉のもとを走り去っていったのだ。 そういうことで今に至っているわけだ。
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