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「お前誰が好き?」
「何が」
「俺たちの中で」
「らぶ?らいく?」
「ラブに決まってんだろ」
「うーん皆すきだな」
「えービッ」
「チじゃねえ!皆すきだよー、うん」
「…まあ一番言われて嬉しい答えだったかも」
「まーじで」
そら良かった。フラペチーノ美味しい。
冬に厚着で歩き回って汗かいて冷たいものを飲むのがすきだ。少量なら身体もそんなに冷えないし。冬のスタバが特にすき。何か安易だけど、お洒落だよなー。なんて。
「どこがすきなの」
「うーん?アキラくんはかわいいよね」
「かわいいかぁ!?アイツが?」
「うん。かわいいし格好いいし…彼氏にしたら一番楽しいしベタ惚れになる」
「生意気な…」
「えー」
「他は?」
何でマコト今日こんなに恋バナしてくんだろ。私はフラペチーノしか頼んでないのにカフェラテとケーキ頼んでるし。スタバ高いのに!でもダッフルコートとかセーターとかサラーってかっこよく着こなせちゃうのが羨ましい。男の人って得だよなー…1枚でイケメンに見えるもん。女の子は重ね着命ですよね、チラ見せとかね。正直面倒くさいよね!
「あーでも『もしガチで告白するなら誰?』って言われて一番現実的なの楢崎かも」
「えー…あー…そうだよなー」
「何かね…何となくだけどね…ちょ、この話やめない?」
「ブスな顔で笑うな!」
いきなり顔が火照ってきた。そんなにマジで楢崎のことすきなんだろーか…いやそこまでは…うん。皆大好き、だ。私は。
マコトは目線をゆっくりとだけどキョロキョロと変えながらカフェラテを飲んでいる。肘をついてぶすっとしているので少しヤンキーっぽい。話してみたら明るくて軽快な良い人なのに勿体ない。
「…赤の他人の心配をしてしまったわ」
「へ?」
「マコトを見定める価値観の問題について我、思い悩む。はたして色眼鏡を通して見るものは凡を美に変えうるも」
「どうしたお前」
「いや、マコトも素敵だよと」
通行人に自慢したい程度には…八田も素敵だな。腕を組んで歩きながらニヤニヤが止まらないだろう。一緒にいて安心なのは間宮かな。頼れるって重要ポイントだし。
「…お前さ」
「うん」
「…俺のことどう思ってんの」
ズゴゴ、フラペチーノを飲みきってしまった。ストローは虚しく空のカップの中をさ迷う。まだ飲み足りない、と思うくらいで止めるのがちょうどいいのだろう。私は緑のストローから口を離した。指先がカップの形を変えていく。
「…泣きそうなるからやめて」
「…すきじゃないの」
「…みんなと…一緒」
「…そ」
マコトは身体の向きを斜めに変えて、下を向きながらストローから口を離さない。相変わらずブスッとしていて、横柄な態度をとる人に見られそう。ああ、勿体ないなあ。
「…私は…みんな…すきなんだよ」
そう。例えるなら、あのメンバー内で殺し合いになったなら、私は泣き叫ぶこともせず皆の殺戮を身体を張って止める。そのままみんなに殺されてもいい。一番最初に殺されたい。
私は君達に殺されたい。
「…どうせなら…」
マコトがビクッとこちらの様子を伺うのがわかった。イライラと悲しみと自己嫌悪と人恋しさと、私はどうしたらいいのか解らない。
「世界一可愛い女の子で生まれてきたかった…」
楢崎に愛されるような。マコトの自慢の彼女となれるような。
アキラの、八田の、間宮の、薬指を光らせることができるような。
私はみんなを愛しながら、みんなに殺されたいのです。
自分勝手かな、とか。
知らないよ。きっと世界は私の望む終わり方を知らないから。
帰ろ、と鞄を持ってくれたマコトの背中がぼやけて見えた。みんな、どうして誰かと一緒に生きたがるんだろう。
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