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やはり、どう考えてもたどり着く答えは一つだった。真実はいつも一つ、とかどうとか格好いいこと言うつもりはないのだが、紛れもなく一つだった。
「僕は、こーくんのことが好きなのかも知れない」
古都が、現場に行き、ひとりしかいない部屋で頭を抱える日向。呟いた言葉は、どこに行こうか部屋の中を彷徨った。
頭の中で、混乱極まり、自分の感情を問う日向。
『待てよ、僕。好きってなんなんだよ、相手は男だぞ? しかも手には届かない高嶺の花』
事実を並べてみたって今、この現状は、変わらなかった。好きなのは好きだし、男は男。そう思えば思うほどやっていけなかった。
「やっぱり、好き……、なのかな」
自分の言動と行動を思い返して一人つぶやく。自分は古都が好き。鳳日向は、夜桜古都のことが好き。その言葉の響きが心なしか、とても甘美に聞こえる。
『どうせ、クヨクヨしたって変わんないものは変わんないんだ』
ーーー"好きは理屈じゃないんだ"
昔、古都に言われた言葉がふと心の中をよぎる。好きは理屈じゃない。彼の言ったその言葉が、日向の気持ちを形あるものへと、固い決意の様なものに変えていく。
『認めよう』
この感情は好きであると認めよう。そして、いくら相手が高嶺の花でも、足掻いてみよう。この手で掴もうと、足掻いてみよう。
だって、好きは理屈とかそういうんじゃないんだから。
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