君の好き

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 キラキラと輝く店内の雰囲気に、少し圧倒される古都。日向は逆に全く気圧されることなく、物怖じせず店内に入って行った。その様子を見て『すげぇ』と感心しながら、古都もゆっくりと日向の後ろをついて行く。  デパートの隅にある宝飾店に二人は来ていた。  白を基調とした美しい店内は、客に清楚な印象を与える。周りにはカップルばかりで、古都は少し場違い感を感じてしまうが、日向は別にそれほど感じてなさそうだった。 「綺麗だね……」  美しく煌めくプラチナの指輪を見て、目を輝かせる日向。古都は日向のその様子を見て「あぁ、確かに綺麗」と応えた。  指輪を見て回って古都は、隣で爛々と目を輝かせる日向が指輪を付けてる姿を妄想してみた。それは、なんだかこそばゆくて、すぐにやめた。  後から恥ずかしさが襲ってきて、急いで顔を手で覆い隠す。 「ん? どしたの、こーくん」  そんな古都の様子に気づいた日向は、古都の顔を覗き込んだ。覗かれた本人は恥ずかしくて、ただ「なんでもねぇ」とだけ呟く。 「何をお求めでしょうか」  そんな妄想をして羞恥に耐えかねている古都の方に、可愛らしい小柄の女性店員がやってくる。優しい声色で、突然、そう尋ねられたものだから古都は、なんにも答えられず「え?」と狼狽える。  突然のことだから驚いたというのもあるし、こうしてちゃんと直視されては、俳優の夜桜古都であることがバレるかもしれない。古都はいざこざを避けるために、反射的に日向の方へ助けを求める。  日向はそんな古都の視線を受け止めて、笑顔を作る。 「いやぁ、なにかペアルックになるものが欲しいなって思って来たんです」  古都はその言葉を聞き、カップルかとバレないか心底びくびくしていた。カップルとバレて、夜桜古都だとバレたらもう全てが終わりだ。実を言うと、古都よりも日向の方が、びくびくしていた。  二人の気付かれたくないという必死の思いが神に届いたのか、店員は二人が恋仲だとは気付かなかった。ペアルックは友達としてのペアルックだと解釈したらしい。 「いいですね〜、ペアルック! 最近は男の方同士も増えてらっしゃるのですよ!!」  そうやってテンション高めに「何にしましょうか?」と言ってくる店員さん。古都は、そのテンションの高さに驚いた。日向も少し目を見開いている。 「……えと、時計とかありますかね〜?」 「あぁ、時計ですね! 買うにあたって、いくらまでとか予算とかありますか?」 「予算かぁ……うーん、どんぐらいにする?」  「こーくん」と、小声で古都の名を呼ぶ日向。一応、名前で古都の正体がバレてしまったら困るので、デパートに入ってからは、少し名前を呼ぶのを避けていた。日向の質問に、古都は「まぁ、いくらでもいいよ」と答える。その口調は、日向のためなら、出す金は惜しまないとでも言いたげな口調だった。  日向は「さすが金持ち」とイヤミのように嘆く。古都が『日向もだろ』と思ったのは、言うまでもない。 「ん〜、予算は特にありませんねぇ。とりあえず、かっこいい日常的に使えるようなデザインの時計が欲しいかなぁ。……ね?」  と、古都に視線を送る日向。 「あぁ、そだな」  古都も日向の方を見返してそう言った。 「えぇ〜、なんだかとっても素敵ですね!!」  女性店員は可愛らしい笑みを浮かべ、テンション高めにそう言った。そして、慣れた手つきで、ふたりを時計ゾーンへと勧誘していった。
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