0人が本棚に入れています
本棚に追加
花火が咲く頃、君は微笑む
「……私も好きだよ、君のこと」
彼女は満面の笑みで、そう告げた。
………途端に、大きな花火が上がった。
ぽかんとして、固まったようになった僕に、彼女は笑いながらこう言った。
「何固まってるの
私、会ったときから好きだったんだから」
僕は思わず笑みがこぼれてしまった。
「……ありがとう」
自然と、そんな言葉をこぼしていた。
彼女は笑って「いいえ」と答える。
彼女と僕は、目を合わせた。
花火は上がり続け、僕らと夜空を照らしていく。
彼女は僕に目配せをして。
そっと、キスをした。
初めてのキスの味は、甘酸っぱいオレンジの味がした。
蝉の声が聞こえる花火大会の中。
火照った顔を見合わせて。
僕は、最初で最後の恋をした。
最初のコメントを投稿しよう!