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花火が咲く頃
花火大会の会場は、大賑わいを見せていた。
屋台のいい匂いと、人の声。
「ほら、早く場所取らないと」
花火を見る場所は、早いものがちで取らないといけない。
僕らは歩いて歩いて、そしてやっと場所取りに成功した。
「はぁ〜、見つかってよかったぁ〜」
彼女はレジャーシートの上に座り込み、足が痛いのか、ピーンと足を上げた。
「……何か買ってこようか?」
僕は気を利かせて彼女にそんなことを聞いた。
「あ、じゃあかき氷食べたい!
いちご味のやつ!」
彼女は僕に笑ってそういった。
僕は「わかった、待ってて」と笑いながら言い、財布を片手に足を走らせた。
運良くかき氷の屋台は人が少なかったため、早めに買うことができた。
僕は焼きそばを買って、元のレジャーシートの場所へと帰った。
「はい、どーぞ」
僕が手渡すと、彼女は笑う。
「ありがと!」
かき氷を食べながら、彼女は空を見上げる。
「まだかなぁ……」
どうやら花火を見たいようだ。
僕も空を見るが、空にはなんの変化もない。
その時だった。
ヒューという音とともに、空に大きな花が咲いた。
周りに歓声が沸き上がる。
花火大会はついに始まった。
「わぁぁ……きれい……」
花火の光に照らされて、彼女の横顔が僕の目にキレイに映る。
言わなきゃいけない。
彼女に。
……もう、会えなくなるのなら、伝えないといけないんだ。
思えば思うほど、緊張して拳を握ってしまう。
「……? どうかした?」
横顔を眺めていた僕に気づいたのか、彼女は首を傾げて僕に聞いた。
「……あ、あのさ」
心臓の音がうるさい。
花火と周りの歓声よりも、うるさい。
「……うん」
キョトンとした顔で、彼女は言った。
僕は深呼吸をして、続ける。
「……ぼ、僕、実は……
き、君のことが……っ……」
言わなきゃ。
後悔なんてしたくないんだ。
心臓がはち切れそうになりながら、僕は意を決して。
「す……好きなんだ……!!!」
叫んだ。
返事が怖くて、目をつぶった。
彼女は一体、なんと言うんだろうか。
驚いた顔をしてるんだろうか。
「……そっか」
僕が目を開けると、彼女は困り笑いをしていた。
「……困らせ……ちゃった?」
僕が聞くと、彼女は笑う。
「そんなことないよ!
……ただ……」
彼女は俯いた。
「……わかってるよ、もういなくなっちゃうのは……
だから……」
僕が言うと、彼女は困り笑いをして答えた。
「……わかってたんだ」
僕が「うん」と答えると、彼女は続けた。
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