199人が本棚に入れています
本棚に追加
落下した十九の冬
どうにか講義に間に合ったけれど、教授の言葉は右から左へと流れていく。
眠いうえに怠い。
全力で走って目は冴えていたのに、教室が暖かくてうとうとしてしまう。
後ろの方に座れてよかった。
「理香、また藤代バカトのところに行ったの?」
小声で芽衣子が話しかける。
半目でこっくり頷くと「ばか」と言われた。
馬鹿なんてわかってる。
ド級の馬鹿だ。
反論する気も湧かない。
ふと目をやると、斜め前に外山くんが座っていた。
周りから頭一つ飛び出ていて、褐色の肌の外山くんは目を引く。
あまり男の子の名前を覚えていない私でも外山くんは覚えていた。
これまで外山くんの顔を意識して見たことはないけれど、よく見ると睫毛は長いし、鼻の形はどこかの国の絵画みたい。
彫りが深い横顔には自然な影がある。
外国の血でも入っているのだろうか。
鳶色の澄んだ瞳が羨ましい。
もし外山くんが女の子だったら、マスカラもシェーディングもカラコンもきっと必要ない。
天然で勝負できる素材。
そういう女の子は何も言わなくても、ただそこにいるだけで劣等感を与える。
最初のコメントを投稿しよう!