落下した十九の冬

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落下した十九の冬

どうにか講義に間に合ったけれど、教授の言葉は右から左へと流れていく。 眠いうえに怠い。 全力で走って目は冴えていたのに、教室が暖かくてうとうとしてしまう。 後ろの方に座れてよかった。 「理香、また藤代バカトのところに行ったの?」 小声で芽衣子が話しかける。 半目でこっくり頷くと「ばか」と言われた。 馬鹿なんてわかってる。 ド級の馬鹿だ。 反論する気も湧かない。 ふと目をやると、斜め前に外山くんが座っていた。 周りから頭一つ飛び出ていて、褐色の肌の外山くんは目を引く。 あまり男の子の名前を覚えていない私でも外山くんは覚えていた。 これまで外山くんの顔を意識して見たことはないけれど、よく見ると睫毛は長いし、鼻の形はどこかの国の絵画みたい。 彫りが深い横顔には自然な影がある。 外国の血でも入っているのだろうか。 鳶色の澄んだ瞳が羨ましい。 もし外山くんが女の子だったら、マスカラもシェーディングもカラコンもきっと必要ない。 天然で勝負できる素材。 そういう女の子は何も言わなくても、ただそこにいるだけで劣等感を与える。
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