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白に近い金色の髪から透ける、両耳にズラリと並んだピアス。
細い躰によく馴染んだ黒い革のライダース。
遠くを眺める冷たい瞳。
すべてがモノクロになり、その男の人だけが鮮やかに色付いて切り抜かれた。
私はこのときはじめて、目を奪われるという言葉の意味を知った。
ぽかんと口を開ける私には目もくれず、その人は長い脚で通りをズカズカと進んでいった。
道筋には、甘い香りが残された。
「理香って、ああいうロックっぽい男に興味あったの? 知らなかった」
友達の問いかけに、私は首を横に振った。
それは嘘ではなかった。
私はロックな男の人にもロックな音楽にも興味はなかった。
けれど、なぜかその人からは目が離せなかった。
派手だったから。
背が高かったから。
田舎者の私にはそういう男の人が珍しかったから。
そんな理由を並べてみたけれど、どれも違う気がした。
その夜はよく眠れず、瞼に焼き付いたその人の姿を何度も思い出した。
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