落下した十九の冬

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―――藤代奏人はしょっちゅう女を代える。 友達の少ない私の耳にも、その噂は入ってきた。 ショックではなかった。 入れ替わり立ち替わりする女の子達を見ていたから、そんな気はしていた。 奏人からは女の子に慣れていそうな空気が漂っていたし、女の子が奏人に惹かれる気持ちもわかる。 友達から「藤代って気持ち悪い」と言われた私は、「へぇ、そうなんだ」と渇いた相槌を打った。 常に噂の中心になる人間と、噂を耳にするだけの人間。 奏人と私の世界の違いを感じた。 大学一年の冬、私のSNSに奏人からメッセージが届いた。 何度も瞬きをし、何度も目を擦って送り主の名前を確認した。 それは間違いなく藤代奏人からのメッセージだった。 『同じ大学の藤代奏人です。 涼宮(すずみや)さんの学生証を拾ったので連絡ください』 手を震わせながら、書かれていた連絡先に返信を打った。 たいしたことのない、たった数行のメッセージ。 それだけのメッセージを打つのに、えらい時間がかかった。 対して、奏人からの返信はとても早かった。
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