ビー玉は蜂蜜色

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外山くんはペールピンクに塗られている私の爪をちらっと見ると「コーヒーでも飲む? それとも紅茶の方がいい?」と言って絵具を片付けようとした。 「待って。私、やってみたい……」 「でもマニキュアが」 「やってみたいの」 そう言うと外山くんはフィンガーペイントの準備をしてくれた。 木製のテーブルにはたくさんの絵具と大きな画用紙。 私ひとりで描くには随分と大きい気がする。 「外山くんも描くの?」 「ううん。大きいと思うだろうけど、やってみると案外、すぐに埋まるよ」 外山くんはパレットに絵具を出しながら言った。 そういえば絵具に触れるなんてすごい久しぶりだ。 高校では美術を選択しなかったから、五年振りくらいだろうか。 「えっと、どうやればいいのかな?」 「涼宮さんの好きに」 「好きに……」 「決まりはないよ」 そう言って外山くんは急に本棚の整理をし始めた。 私が視線を気にせず、自由に描けるように気を使ってくれたのだろう。
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