ビー玉は蜂蜜色

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テーブルを挟んで外山くんと向かい合い、一枚の画用紙に二人で手指で絵具を塗っていくのは、なんだか少しおかしな気がした。 けれど、とても懐かしいような、落ち着くような――。 不意に、頭上から花梨ちゃんの声が微かに聞こえてきた。 たぁくんから本当に電話がかかってきたのだろう、と外山くんは少し煩わしそうに言った。 たぁくんと話すときの花梨ちゃんは、いつもの倍は声が大きくなるのだそうだ。 「たぁくんさんは、ここに来ることもあるの?」 「たぁくんさん……」 「え?」 「たぁくんさんって……」 肩を震わせながら外山くんは俯いた。 堪えきれなかったのであろう笑い声がクスクスと零れてくる。 呼び捨ては失礼かと思い、さん(・・)を付けたけれど、外山くんの笑いのツボにはまったらしい。 この姿を見るのは二回目だ。 前回の「馬乗りになって脅した」と言ったときのことを思い出す。 あのときも、今も。 真っ暗闇から引っ張り出してくれたのは外山くんだった。 「たぁくんさん(・・・・)、たまにうちに来るよ。 涼宮さんもいつか会うかも」 いつか会うかも、という言葉に、胸がぽっとあたたかくなる。 外山くんにとって私は「これからもこの家に来る人」という枠に入っている。
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