ビー玉は蜂蜜色

14/16
前へ
/435ページ
次へ
「どうして、そんなふうに言うの……」 外山くんは俯くだけで、何も答えなかった。 微かに震える睫毛が瞳に影を揺らめかせる。 外山くんもどこかの真っ暗闇にいるのかもしれない。 そこから抜け出せず、迷っているのかもしれない。 それなら私はその手を引っ張り、違うところへ連れ出したい。 外山くんが私を助けてくれたように。 けれど、私のような馬鹿な犬にいったい何が出来るだろう。 こんな無力な私に、何が――。 「パレットに出した絵具、使いきっちゃおう」 外山くんは何かを振り切るように言い、微笑んだ。 きしきしとした、硬い笑顔。 その痛々しい笑顔に私も微笑み返す。 そうしないと、なんだか外山くんを傷つけてしまうような気がした。 外山くんは絵具のかたまり(かたま)りを、ぽとりと画用紙にのせた。 画用紙がちいさかったのか、絵具が多かったのか。 画用紙の上はたっぷりの絵具で照り輝く。 まるでペンキをひっくり返したみたい。 多かったね、と苦笑する外山くんはさっきよりは自然な笑顔だった。 時折聞こえてくる花梨ちゃんの笑い声をBGMに、二人で黙々と絵具を塗り広げる。
/435ページ

最初のコメントを投稿しよう!

199人が本棚に入れています
本棚に追加