ビー玉は蜂蜜色

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「――涼宮さん、ありがとう」 「え?」 「花梨の英語のテスト、すごくよかったから。涼宮さんのおかげ」 「ううん、私なんてたいしたことしてないよ。 花梨ちゃんが頑張ったから」 「涼宮さんのおかげだよ。 相手の立場になって考えられるから、教えるのがうまいんだろうね」 低音で発せられた言葉が、真っすぐ胸に響く。 うれしい――けれど、こんなにも真っ直ぐに言われてしまうと、こそばゆい。 「そんなこと、ないよ……本当に、花梨ちゃんが頑張ったからで」 「涼宮さんが教えてくれたから、頑張れたんだよ」 「いや、本当に……私は」 「ありがとう」 紅潮する頬を隠したくて、私は背中を丸めて指先だけを動かした。 ぐるぐると、ひたすらに。 何をしているのか、よくわからなくなってくる。 話題を変えよう。 何か、別の話をしよう。 そう思った瞬間、もったりと積もった絵具に指先をさらわれ、絵具だらけの右手は画用紙の上をつるりと滑っていった。
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