それは見世物小屋

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「ごめんね、涼宮さん。後できつく𠮟っておく。 わざわざ来てくれたのに、ごめん……」 「ううん、全然」 驚きはしたものの、不思議と怒る気はしなかった。 天気はいいし、どうせだから買い物でもしてから帰ろう。 楽しみにしていたアフタヌーンティーに行けないのは残念だけれど。 「そうだ。お店はどうするの? 予約したのは席だけ?」 「ううん、アフタヌーンティーのコースで予約してある」 「えっ……」 思わず大きな声を出してしまった。 外山くんも私も黙り込み、周囲の雑音がどんどん大きくなっていく。 いま、外山くんは何を考えているだろう。 私と同じことならいいけれど、違うかもしれない。 こんなことを言ったら迷惑かもしれない。 けれど外山くんなら、きっとひどい断り方はしない。大丈夫――。 断られてもいいように、心の準備を整えてから口を開く。 「あの……もしよかったら、一緒に行かない? キャンセルは出来ないだろうし、お金だけ払うのももったいないし」 もちろん無理にとは言わないけど、と言おうとすると、私よりも先に外山くんが言った。 「そうしてもらえると、すごく助かる」 今日は下ろしたばかりの新しいワンピースで、天気はよくて、アフタヌーンティーは楽しみで。 そんないいことづくめの私に、外山くんは遠慮がちに微笑んだ。
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