それは見世物小屋

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赤と黒でまとめられた仄暗(ほのぐら)い店内は、中国宮廷を思わせるような六角形の提灯が煌々と紅い光を放ち、幻想的な空間となっていた。 二胡(にこ)の音色が儚く鳴り響く。 運ばれてきたアンティーク調の丸型の飾り棚には、つるりとしたマンゴープリン、照り輝くエッグタルト、まん丸い胡麻団子、翡翠色や桃色をした点心に、パリッと揚げられた一口サイズの春巻き。 ガラスのティーポットでは工芸茶の薄紅色の花がゆっくりと開花していく。 洗練された雰囲気のお店に、不安になってくる。 何か粗相をして、一緒にいる外山くんに恥をかかせたりしないだろうか。 「あの、外山くん……アフタヌーンティーって、食べ方にルールやマナーってあるのかな?」 「中国式のアフタヌーンティーはわからないけど、西洋だとサンドイッチ、スコーン、ペイストリー……食事ものから先に食べるのが基本。 けど、厳密なルールではないみたいだし、そんなに固く考えないで平気だよ」 ぼそぼそと質問した私に、外山くんはクリアに答えてくれた。 胸を撫でおろし、四角形のちいさなガラス鉢に入った鮮やかなマリネから手をつける。 思ったよりもお酢が効いていて、口の中がさっぱりとする。
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