落下した十九の冬

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血管の浮き出た腕は思っていたよりも逞しく、胸にはしなやかな筋肉がついていた。 この躰に触れる権利を与えられた女の子達。 彼女達はここでどんな時間を過ごしたのだろう。 この腕に抱かれ、この胸に包まれ、どんな言葉を交わしたのだろう。 胸がチリっとした。 「理香ちゃんも座れば?」 突然、伏せられていたはずの瞼が大きく開き、視線が私を刺した。 奏人はにこりと深く微笑む。 ―――ばれた。 一気に全身に熱が回る。 いつから私の視線に気づいていた? まさか最初から? 私は躰を縮めてソファーに座った。 「理香ちゃん。そっちじゃなくて、こっち」 大きな手からすらりとのびた人差し指が、ベッドを差す。 「ソファーじゃなくて……そっち?」 「来て」 薄く開いた瞳が私を引き寄せる。 ふらふらと立ち上がり、黒で統一されたシングルベッドに腰を掛けた。 小さな音を立て、ベッドが軋む。 奏人は何も言わず、私の横顔をすぐ隣からじっと見つめた。 その瞳から逃れるように、私はベッド脇にあるサイドテーブルを見る。
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