199人が本棚に入れています
本棚に追加
「外山くんはこういうところ、花梨ちゃんとよく来るの?」
「たまに。花梨の誕生日や、成績がよかったときなんかにねだられる」
外山くんは私のようにお店の雰囲気に気圧されていなかった。
手触りのよさそうなチャコールグレーのニットも、つやつやとした黒髪も、この空間にきれいに溶け込んでいる。
外山くんの静謐さは、どこにいても様になる。
外山くんなら、漢服なんかでも着こなせそう。
「中華だから、お団子?」
突然、外山くんが言った。
目を丸くしていると「ほら、髪の毛」と付け足された。
外山くんの言うとおりだった。
中国式のアフタヌーンティーに合わせて、めずらしく髪をシニヨンにまとめてきた。
不器用な私は「五分で出来る、簡単こなれシニヨン」という動画を見ても十五分以上かかってしまった。
いや、ニ十分以上かもしれない。
「髪、おかしかったかな……」
「おかしくないよ。大丈夫」
ちいさく、やさしく、微笑まれる。
外山くんの「大丈夫」には、どうしてこんなに安心できるのだろう。
同い年なのに、もし私にお兄ちゃんがいたらこんな感じなのかな、と思ってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!