それは見世物小屋

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退席時間になり、お会計へ向かう。 外山くんは「終わってるから」と言って、そのままお店を出た。 目をぱちくりしていると、店員さんは笑顔で「ありがとうございました」とお辞儀をした。 急いで大きな背中を追いかける。 退席時間の少し前に外山くんが席を立ったのは、てっきりお手洗いにでも行ったのかと思っていた。 なんてスマート。 「外山くん、お会計はいくらだった?」 「いいよ。今日は花梨がしたことに巻き込んじゃったから」 「ううん、払うよ」 「巻き込まれた迷惑料だとでも思って」 「でも私、もともとアフタヌーンティーに来たかったから」 「いいから、本当に。お財布しまって」 「じゃあ……今度は私に払わさせてね」 「今度……?」 今度(・・)には深い意味はなかった。 それでも、自分の口から出てきた言葉に自分で驚く。 あたふたとしながら「今度は花梨ちゃんも一緒に。三人で、どこかへ行かない?」と言うと、外山くんは「途中で花梨が姿を消すだろうね」と、フッと笑った。 外山くんの言うとおり、きっと花梨ちゃんは姿を消す。 それどころか、今日みたいに最初から姿を消すかもしれない。 そうなれば、外山くんは今日みたいにたくさん話してくれるだろうか。
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