それは見世物小屋

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「脱がしやすそうなワンピース」 「別に普通の、ただのワンピースだよ……」 「珍しく、髪までセットしてる」 いつも髪を下ろしているのは私が不器用だということもあるけれど、下ろしている方が髪に触れてもらえるような気がした。 奏人の長い人差し指に、くるくると髪を巻き付けてもらえるかと――。 「あれから、ずっと仲よくしてたの? 理香ちゃんと外山は」 「あれからって……」 「そんなによかったんだ、外山とのセックス。 三回じゃ足りなかった? そうだよね。やさしいんだもんね、外山くんは」 何も言えなくなる。 私はあの日、外山くんとのセックスについて、奏人になんて言った? ――気持ちよかった。 ――いっぱいキスして、いっぱい頭を撫でてくれた。 ――三回した。 そう、そんなふうに言った。 けれど、それは嘘で。 奏人が言うような意味では、外山くんと仲よくなんてしていない。 あの日だけでなく、一度も。
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